血管から血液の流れヘ目を向ける

      2017/08/06

これまでも「血液の循環が大切」だといわれてきました。

ここで繰り返すまでもないだろうけれども、血液循環を考えるときに、世間では血管にばかりに目が向けられ、「血管をしなやかにする」「血管を強くする」など実行の方法がない、意味のないことばかりいわれてきました。

血液の循環には、血管、特に動脈系の血管が重要な役割を果たしている。循環の原動力は心臓から血液が送り出されることだ。けれど、実際に組織に対する還流圧、すなわち血圧をつくり出しているのは、動脈、特に小動脈の弾性と収縮だ。

動脈は交感神経系の支配を受けて、収縮したり拡張したり、相互に調和をとって血液を体のすみずみにまで循環させる。その血管の運動性が
循環の良否を決めると思われてきた。

たしかにそのとおりだが、血液循環の善し悪しを決める重要な要素は、血管ばかりではない。

血液自体の流動性、流れやすさもまた、大切な問題だ。特に、末梢組織にくまなく血液を循環させるために欠かせないのが、血液の高い流動性だ。

これまで、生活習慣病の原因は動脈硬化、すなわち血管の問題として理解されていたが、動脈硬化自体の原因に関しては、循環の視点から「血液の流れやすさ」に着目することが特に必要だろう。

なぜなら、医者を含めて、血液は「液体」として認識され、よく流れることが当然であるかのように思われてきたので、血液の流動性の問題が見すごされてきたのだ。

血液は大動脈、動脈さらに細かく分かれた細動脈をへて、毛細血管に至る。そこで、ガス交換・物質交換を行って、細静脈、静脈の集合血管を通って上下の大静脈に集まり、心臓に戻ってくる。

この循環経路で、赤血球などの血液細胞は血管から漏れ出すことはない。しかし、血液中の水は、毛細血管上流側で一部、血液から組織に漏れ出し(濾過という)、逆に毛細血管下流側で、組織から血液に吸収されて組織の中を還流している。

水が過剰に組織に漏れ出たときは、毛細リンパ管で吸収されてリンパ循環系をへて左右の鎖骨下の静脈に合流し、血液に戻る。このような
水の流れにのって、水に溶ける物質も組織を回っている。

水に溶けない物質は、血漿タンパク質に吸着されて循環する。血漿タンパク質もわずかであるが、毛細血管壁を通過して組織側に移動し、リンパ循環系をへて血液に戻ってくる。毛細血管が体中に分布しているのと同様に、毛細リンパ管も体中に分布している。

そのリンパ循環系が障害されると浮腫が発生し、血液と組織のあいだのガス交換・物質交換も障害される。心臓や肺、脳で浮腫が発生すれば、いのちにかかわることになる。

正確にいうと、循環系とは血液の循環系と体液の循環系を合わせたもののことだ。血液と体液が循環することで、酸素と栄養素を組織に運び、炭酸ガスと老廃物を除去する。また、組織の水分量を調節し、体液のpH(酸性度)や温度を一定に保つ。

すなわち細胞の環境を一定に維持する。白血球は血管系とリンパ管系を循環し、侵入してきた病原微生物と闘い、悪性腫瘍や異物を攻撃する。

血小板は循環しながら、血管の傷を見つけてふさぐ働きをしている。自血球と血小板は体を守り、血管を保守するたいへんに大切な働きをしている。しかし、その自血球と血小板が組織を壊したり、血管をふさいだりして、病気の原因にもなる。そのことは別ページで紹介します。

生命は海で生まれた。細胞がつかっている体液は、太古の海の成分と同じだといわれている。太古の海で生まれた生命は、自分自身の中で代謝の仕組みを変えながら、進化してきた。

まず、単細胞生物は外界から直接、酸素や栄養物をとり込み、 エネルギーに変えた。

そして、そのときにできた老廃物を外界に出した。単細胞生物が多細胞生物に進化したとき、各細胞は外界に囲まれていたときと同じように、細胞外液につかった状態を保った。

一つひとつの細胞が、太古の海につかっている状態を再現したわけだ。その細胞外液を一定に保つためにできたのが、循環系だった。

驚くことに、私たちの細胞の一つひとつは、循環する細胞外液に包まれることによって、今でも生命が誕生したときと同じ状態におかれているのだ。体内の水分は、細胞の内部に三分の二(細胞内液)、細胞の外部に三分の一(細胞外液)がある。

細胞外液と呼ばれる液体の四分の一が、血漿だ。血液は激しく流れ、体液はゆっくりと細胞のまわりを回り、エネルギーと物質を交換している。

人間の体にある六〇兆個といわれる細胞はすべて、 一つひとつが生命の誕生した最初の細胞のような環境をもっている。

そして、それを可能にしているのが循環系なのだ。生命が初めて誕生したときの細胞の条件をもちながら、それに気づかず私たちは地球環境を破壊してきたのではないだろうか。

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